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あなたのキレイと元気を磨く!「植物の力」で輝くライフスタイルを!

植物のめぐみを取り入れたライフスタイル「BOTANICAL LIFE」を、テーマ別に週替わりでご紹介します。
植物の世界からあなたに届く「美しい贈りもの」です。

2016.10.14

Botanical Books

Botanical Books7
里山から高尾山、霧ヶ峰まで! 山歩きが楽しくなる花のガイドブック

山の澄んだ空気や、季節ごとの自然の景色を求めて、登山、山歩きが人気になっています。そして、そんな山で過ごす時間にふと心を和ませてくれるのが、山道の脇に慎ましく咲く山の花々です。 

山に秋を告げるシラネセンキュウ


「植物」に関しての名著や新刊書、写真集などを毎回お届けする「ボタニカル・ブックス」。今月は山の花々を楽しく見分けることのできる『原寸大 見分ける低山の花100』(新井和也/山と渓谷社)をご紹介します。

山歩きを楽しくする花との出会い

広がる空の下、山の頂を目指す山歩きや登山。頂上に着いた時の達成感や、そこから望む壮大な風景の素晴らしさも、都会では味わえない至福の体験ですが、その山歩きをもっと思い出深いものにしてくれるのが、山の「花々」との出会いです。 

 奥多摩、奥秩父、丹沢、高尾山など1年を通じて多くの人が訪れる東京近郊の山でも、 春、夏、秋と多くの印象的な花や植物が、登山客を迎えてくれます。そして、その花は、日頃、植物園や公園の花壇、花屋さんの店先で見るものとは違い、静かに控えめに山の中で凛として存在しています。 山の精霊に命を授かった花々は、どんなに小さくても自然の生命力の結晶と言えるでしょう。
 
こんな山の花々をより手軽に体験出来る、首都圏の代表的な山と言えば「高尾山」です。都心からでも登山口まで直通電車が走り、初心者の山歩き体験には最適な場所と言われています。昔から信仰の山としても知られ、時代の権力者によって一帯が保護されて来たため、自然に富んだ山として多くの花や植物に恵まれています。同時にその植物が育つことで、昆虫、野鳥が豊富に集い、生物多様性にも恵まれた「高尾山」。ミシュランガイドで最高の「三ツ星」の指定を受けており、四季を通じて日本の山の魅力を手軽に楽しめる山の代表と言えます。

高尾山の四季を彩る花々

『原寸大 見分ける低山の花100』には、里山から高尾山クラスの低山、霧ヶ峰など標高1500メートルの中級の山までを目安に、季節ごとの花のガイドが掲載されています。そこには原寸大で大きさや色の特徴、そして名前の由来なども語られ、小さな山の花が持つ個性的なストーリーを知ることができます。では、ここで低山の花々で四季の移り変わりを追ってみましょう。


ネコノメソウ
漢字で書くと「猫の目草」、 春に2ミリほどの淡黄色の花をつけ、花が咲いた後の果実が「猫の目」のように見えるところから、この名前が付けられています。日本全国の山地、湿地に生え、群生するので比較的見つけ易く、柔らかな春の日差しを受けた黄色と緑のコントラストが、登山客に春の訪れを教えてくれます。



ホタルカズラ 
丘陵地から山地にかけて、明るい林や草地に生えます。名前の由来は花をホタルの光に見立てたもの。紫の花の中心に星形の模様があるのが特徴で、新緑の季節をより魅力的にする貴重な花です。



ユキノシタ
山地の湿った岩陰や水辺に生え、名前の由来は花が雪のようで、その下に緑の葉が見えるところから。妖精のような個性的な花弁を持ち、夏を告げる花と言われています。



ツルリンドウ
高尾山などで秋の深まる紅葉の季節に咲く、1センチほどの個性的な小さな薄い紫の花。
先が鋭く尖った緑の葉が特徴。





センブリ
晩秋のフィナーレを飾る花。紫の筋が入った1センチほどの大きさの花で日本全国の低山に咲いています。最も秋が深まってから咲く花の一つで、間もなくの冬の到来を教えてくれる花です。

 

こういった山の花を素早く見分けるポイントは、咲く季節を知ることと、色と大きさに注目すること。『原寸大 見分ける低山の花100』の表紙には物差しのようにセンチごとの目盛りが付いていて、そのまま本を花に近づけて大きさを確認できます。山歩きと花との出会いを、より楽しく充実させてくれる一冊です。

より楽しく安全に山の花と出会うために

四季を通じて手軽に山の自然や花々を楽しめる低山の魅力。でも、気をつけておきたいことがいくつかあります。まず、山歩きの基本は足下から。高尾山などの人気のあるエリアの山道は整備されていても、思わぬところに石や岩、木の根が隠れています。スニーカーではなく、しっかりと足首をサポートしてくれる、山用のトレッキングシューズがおすすめです。そして防寒対策、雨対策はお忘れなく。山の自然は都会では考えられないほど、急激に変化します。山では夏も低体温症などの危険性があることを知って、ウエアの準備、カロリー補給のタイミングなどに十分気をつけましょう。
 

 
そして、もう一つ。どんなに美しい花があっても登山道から決して外れないこと。筆者の新井和也さんが何よりも大事にしていたのは、「自分が自然に入ってゆくことで、その影響を最小に抑えたい」という考え方。山の植生や植物を理解しながら山に登り、花や植物の写真や情報とともに、自然に向かいあう姿勢を発信した新井さん。自分が自然に入って、自然が持つ意味やすばらしさを伝えていくことで、山に入る他の人が自然を大切に思うようになり、自然が守られる。その生き方に込められたメッセージは共感を集め、その著作とともに多くの人に慕われています。
 
山歩きの時に出会う花の名前や種類がわかると、その出会った場所により親しみを持つようになります。あなたとその花の出会いは一期一会かも知れませんが、次の年も、またその次の年も、その花がまた同じ場所で静かに咲き続けられるように願いたいですね。
 


『原寸大 見分ける低山の花100』(新井和也/山と渓谷社)

新井和也(あらい・かずや)
1971年生まれ 植物カメラマン、ジャーナリスト。高校時代から山岳部で登山を始め大学では岩登りから冬山まで幅広く山を体験。農学部で植物社会学を学び、執筆活動を行い、山と渓谷社などで活躍。植物写真の専門家としても知られ、著書に「高山植物ハンディ図鑑」「日本の高山植物400」「日本花紀行カレンダー」など。 環境問題にも関心が高く、自宅に太陽光発電を導入、9割の電力を自給するなど、心から自然を愛していた。2013年7月登山中に不慮の事故で死亡。42歳。