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あなたのキレイと元気を磨く!「植物の力」で輝くライフスタイルを!

植物のめぐみを取り入れたライフスタイル「BOTANICAL LIFE」を、テーマ別に週替わりでご紹介します。
植物の世界からあなたに届く「美しい贈りもの」です。

2016.08.12

Botanical Books

Botanical Books5
ページをめくるたび地球を感じる「森」の写真集

代々木公園、吉祥寺公園など、身近な緑豊かなスポットが人気を集めています。写真におさめたり、ハイキングをしたり、木陰でのんびり過ごしたりと、「森」の感じ方や「森」から受け取るメッセージは人それぞれです。世界中の森林を撮影し続ける写真家、小林廉宜さんは、世界各地の森を撮影していくなかで、豊かな自然に出会っただけでなく、そこにあるメッセージを発見します。
 
「植物」に関しての名著や新刊書、写真集などを毎回お届けする「ボタニカル・ブックス」。今月は、小林廉宜さんの写真集『森 PEACE OF FOREST』をご紹介します。 

『森 PEACE OF FOREST』(小林廉宜/世界文化社)

地球はひとつの森である

小林廉宜さんの写真集『森 PEACE OF FOREST』 には、さまざまな森の表情が収められています。中でも今回の作品で特徴的なのは、空撮写真です。世界最大の熱帯雨林であるアマゾンや、ロシアの果てしないタイガ林、カナダのメープルの森と、その奥には地平線が見え、空へと繋がります。小林さんがこの写真集のコンセプトとしているのは、「地球がひとつの森である」ということ。空撮写真の一枚一枚は、まさにそれを表しているかのようです。 

小林さんが森を撮りたいと思ったきっかけは、20年以上前の屋久島でのこと。大雨の日、カメラを守るのに精一杯になりながらも、縄文杉を撮ったり、ウィルソン株の中に入ったりしながらその楽しさに魅了されてゆきます。 下から木を見上げたり、木の株の中から森をのぞいたり、そこで感じた木々のエネルギーをこう語ります。
 
「森の中には、1億5000万キロ先からきた太陽の光と、1000年以上の歴史を生きた樹々の生命が一緒に存在しています。それを強く感じてからは、どんどんと森に心を惹かれていきました」

ドイツの「黒い森」の秘密 


ドイツ、シュヴァルツヴァルト。ドイツ語で「黒い森」と呼ばれ、小林さんも一度は行きたいと思っていた、世界的に有名な森のひとつです。針葉樹と、ブナの木。二層のコントラストが特徴ですが、なぜこのように二種の木々が共存する森になったのでしょうか。
 
もともと生い茂っていたのは針葉樹。その色の濃さを遠くから見ると、密集していて黒っぽく見えることから「黒い森」と呼ばれるようになったそうです。ただ、針葉樹は根が浅く、酸性雨に弱いことを現地の人々は懸念していました。「森がなくなってしまうかもしれない」、そう考えた人々は、300年程前、根が深く酸性雨にも強いブナを植えました。そして300年でブナが美しい緑に育ち、もともとあった色の濃い針葉樹との美しいコントラストが生まれたのです。
 
名前だけ聞くと暗く不気味な世界をイメージしてしまう「黒い森」。ところが、5月にこの森を訪れたという小林さんは、思わず「黒い森の中は黒くないんだ!」と口に出してしまったほど、大きくイメージを覆されます。新緑がとてもきれいで、地面はフカフカやわらかく、雨上がりでできた即席の川に水が流れ、爽やかな風が通り抜けます。
 
「いい森だなぁと思う森の近くには、代々森を守ってきた、素敵な家族や人の存在があります。人々は森の恩恵を受けながら過ごし、森を守りながら生きていく—」 

撮影していて、そういう森とたくさん出会ったと話す小林さん。ドイツの「黒い森」と生きる家族、マダガスカルでバオバブの木の幹によりそう少年たち、デンマークで鹿が住む公園でベビーカーを押す家族など、実はこの写真集の森の風景に欠かすことが出来ないのが「人」の存在です。ただただ自然に圧倒される作品でなく、人、家、動物たちも堂々とフレームの中に存在する姿こそが小林さんが思う「理想の森」なのです。

PEACE OF FOREST 〜タイトルに込めた想い


滝や川、地上にデコボコに張り巡らされた根っこ、暗闇に吸い込まれそうな深い森。小林さんの作品にはもう一つ、ただ美しいだけでなく、自然の力強さや激しさもとらえられています。初めて足を踏み入れた森を撮るのに危険はつきもの、相当過酷な仕事なのではないでしょうか?小林さんはよく、こう質問を投げかけられるのだそうです。
 
「森を撮っていて、危ない出来事に出会ったことは、実は一度もありません。もちろん、“夜は歩かない” “危険な場所には立ち入らない”などと、最低限のルールを守ってのことです。それどころか、行く先々で現地の方々に良くしていただいてばかり。そんな、いい思い出しかないんです。森、自然、そういうことを考えていれば、世の中は平和で良い方向に進むのではないかと思うんです」
 
ご自身のそんな経験と願いを込めて、写真集には『森 PEACE OF FOREST』とタイトルがつけられました。巻末にしたためられたエッセイを、小林さんはこう締めくくっています。「豊かな森があるところに争いは生まれない。Peace of Forest 奇跡は森から起きる」(『森 PEACE OF FOREST』P229より)
 
ページを開くたびに森林浴をするような、ゆったりとして、爽やかな気持ちになれる。樹々の生命力が夏バテを吹き飛ばしてくれそう、そんな「森」の写真集をご紹介しました。
 

小林廉宜(こばやし・やすのぶ)
写真家。1963年福岡県生まれ。九州造形短期大学写真学科卒業。写真家・三好和義氏に師事後、1992年に独立。希少な自然や文化を撮り続ける。雑誌・広告の分野でも活躍し、2003年には玄光社「コマーシャルフォト」において「今、活躍する100人の写真家」に選出された。著書は『森の惑星』(世界文化社)、『シルクロードを行く』(世界文化社)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)など多数。